借家権
建物を借り受けて使用収益する権利のことをいいます。無償の使用貸借契約(例:家族間で無料で使わせてあげるよとの契約)や建物の一部のみを目的として間借りする場合、また明らかな一時使用目的の建物の賃貸借(例:貸し別荘)については、借地借家法の適用はありません。
借家契約の存続期間と更新
【 存続期間を定めた場合 】
- 存続期間(借地借家法29条)
民法604条(最長20年間)の規定は借家契約(建物賃貸借)には適用されず、当事者間で20年を超える特約をすることが出来る。
ただし、1年未満の期間を定めた場合は、期間の定めのない賃貸借契約とみなされる(これを防ぐために定期借家契約があります)。 - 更新(借地借家法26条)
当事者が期間の満了の1年前から6ヶ月前までの間に相手方に対して、更新しない旨の通知、又は条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件(ただし、契約期間については期間の定めのない契約となる)で契約を更新したものとみなされる。
なお、賃貸人が更新拒絶を行う場合は、正当の事由があると認められるときでなければすることが出来ない。 - 法廷更新
更新拒絶の通知があった場合でも、期間満了後、建物の賃借人が使用を継続し、賃貸人がそれに対して遅滞なく異議を述べなかったときは、同様に更新したものとみなされる。
【 存続期間を定めなかった場合 】
- 解約の申し入れ
当事者はいつでも解約の申し入れを行うことが出来るが、賃貸人が行う場合は正当な事由が必要であり、解約の申し入れを行うと、次の期間経過後に賃貸借契約は終了する。
①賃貸人からの解約の申し入れ 6ヶ月経過後に終了
②賃借人からの解約の申し入れ 3ヶ月経過後に終了 - 更新
賃貸人が解約の申し入れを行い6ヶ月を経過した場合でも、賃借人が使用を継続し、賃貸人がそれに対して遅滞なく異議を述べなかったときは、更新したものとみなされる。
建物賃貸借の対抗力
建物の賃貸借は、賃借権の登記がなくても、「建物の引渡し」があったときは、その後に物件を取得した者(建物を売買等により買い受けたものなど)に対し、賃借権を主張することが出来る。
賃借権の譲渡・借家の転貸
借家権は建物の賃借権であるから、借家権の譲渡や借家の転貸には、賃貸人の承諾が必要である。そして、これに反して無断で譲渡転貸を行った場合は、賃貸人と賃借人の間で信頼関係が破壊されたとはいえない特別の事情がある場合を除き、賃貸人は契約を解除することが出来る。
なお、借家の場合には借地と異なって、誰がどのように使用するかによって建物の損耗に差が生じやすく、賃貸人の意思に反して賃借人が代わることを自由に認めると支障をきたすことになるので、借家権については、賃貸人の承諾に代わる裁判所の許可の救済方法は認められていない(借地の場合には裁判所が許可を与えることも出来ます)。