不動産用語集

消費者契約法

消費者契約法の総則

  1. 目的
    (消費者契約法1条)
    事業者の一定の行為により消費者が誤認し、または困惑した場合について契約の申し込みまたはその承諾の意思表示を取り消すことが出来ることとし、事業者の損害賠償の責任を免除する条項その他の消費者の利益を不当に害することとなる条項の全部または一部を無効とするほか、消費者の被害の発生または拡大を防止するため適格消費者団体が事業者に対し、差止請求をすることが出来ることとすることにより、消費者の利益の擁護をはかり、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。

    ポイントは
    《事業者は》 損害賠償責任を免除する条項をつけても無効である
           消費者の利益を不当に害することとなる条項をつけても無効である
    《消費者は》 被害が発生した場合、適格消費者団体に差止請求をすることができる

  2. 用語の定義
    (消費者契約法2条)
    (1)消費者
    個人(個人事業主を除く)をいう
    ※営利の要素は必要ない
    ※反復継続して行われる行為であること
    ※公共性の有無は関係ない → 宗教・介護事業も対象である

    (2)事業者
    法人・その他の団体・事業としてまたは事業のために契約の当事者となる場合における個人(個人事業主を含む)をいいます
    ※株式会社はもちろん公法人・特殊法人・公益法人・個別法に根拠をもつ法人・特定非営利活動促進法人・宗教法人・労働組合もこれに含まれる。
    ※法人格を有しない、社団・財団・マンション管理組合も含まれます。

    (3)消費者契約
    消費者と事業者の間で締結される契約

    (4)適格消費者団体
    不特定かつ多数の消費者の利益のために、本法の差止請求権をこうしするのに必要な適格性を有する団体(法人)として内閣総理大臣の認定を受けた者

消費者契約の申し込みまたはその承諾の意思表示の取り消し

  1. 消費者契約の申し込みまたはその承諾の意思表示の取り消し
    (消費者契約法4条)
    消費者は、事業者の不実の告知、断定的判断・故意の不告知、不退去、監禁などの不適切な行為により自由な意思決定が妨げられた(誤認・困惑)ことによって当該消費契約の申し込みまたはその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことが出来る。
  2. 媒介の委託を受けた第三者および代理人
    (消費者契約法5条1項)
    事業者が、第三者に対し、当該事業者と消費者との間における消費者契約の締結について媒介をすることの委託をし、当該委託を受けた第三者が消費者に対して消費者契約の申し込みまたはその承諾の意思表示の取り消しをした場合には、消費者契約法の規定が準用される。

    (以下の図式になるような場合は、第三者は事業者として扱い、意思表示を取り消すことができる)
    事業者
     ↓(媒介契約)
    第三者 ←売買契約→ 消費者
    ※この場合、売買契約は消費者契約となる 

    (注意:宅建業者(主に不動産)の場合)
    消費者
     ↓(媒介契約)
    宅地建物取引業者 ←売買契約→ 消費者
    ※この場合、売買契約は消費者契約ではない。消費者同士の契約となります

  3. 取消権の行使期間
    (消費者契約法7条)
    この取消権は、追認をすることができる時から6ヶ月間行わないときは、時効によって消滅する。当該消費者契約の締結のときから5年を経過したときも同様である。

消費者契約の条項の無効

  1. 事業者の損害賠償の責任を免除する条項の無効
    (消費者契約法8条)
    次の消費者契約の条項は、消費者の利益を一方的に害する契約条項として、消費者の利益保護のため、一定の例外を除き無効とされる。
    ①事業者の債務不履行責任により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項
    ②事業者の債務不履行(当該事業者、その代表者またはその使用するものの故意または重大な過失によるものに限る)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除する条項
     ※軽過失による債務不履行は一部免除することができる
    ③消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為により消費者に生じた損害を賠償する民法の規定による責任の全部を免除する条項
    ④消費者契約における事業者の債務の履行に際してされた当該事業者の不法行為(当該事業者、その代表者またはその使用するものの故意または重大な過失によるものに限る)により消費者に生じた損害を賠償する民法の規定による責任の一部を免除する条項
     ※軽過失による不法行為は一部免除することができる
    ⑤消費者契約が有償契約である場合において、当該消費者契約の目的に隠れた瑕疵があるとき(当該消費者契約が請負契約である場合には、当該消費者契約の仕事の目的に瑕疵があるとき)に、当該瑕疵により消費者に生じた損害を賠償する事業者の責任の全部を免除する条項
  2. 消費者の利益を一方的に害する条項の無効
    (消費者契約法10条)
    民法、商法その他の法律の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比べて、消費者の権利を制限し、または消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、消費者の利益を一方的に害するものは無効である。
  3. 差止請求権

    (消費者契約法12条)
    適格消費者団体は、事業者等が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、不特定かつ多数の消費者に対して、消費者が消費者契約の申し込みまたはその承諾の意思表示を取り消すことができる行為を、現に行いまたは行うおそれがあるときは、その事業者等に対し、当該行為の停止を請求し、または当該行為に供したものを廃棄するなど当該行為を停止するために必要な措置をとることを請求することができる。

    その他

    1. 他の法律の適用
      (消費者契約法11条)
      ①消費者契約の申し込みまたはその承諾の意思表示の取り消しおよび消費者契約の条項の効力については、この法律の規定によるほか、民法および商法の規定による。
      ②消費者契約の申し込みまたはその承諾の意思表示の取り消しおよび消費者契約の条項の効力について民法および商法以外の他の法律に別段の定めがあるときは、その定めるところによる。
    2. 適用除外
      (消費者契約法48条)
      この法律の規定は、労働契約については、適用しない。