地役権(民法280条)
地役権とは
「事故の土地の利便のために他人の土地を通行や引水のために利用するなど、他人の土地を自己の土地の便益に供する権利」をいいます。
要役地と承役地
要役地・・・自己の土地
承役地・・・他人の土地
※地役権を設定するためには要役地と承役地の二つの存在がないと地役権が設定できない。(片方だけでは設定できない)
※要役地と承役地は隣接している必要はない。
地役権の登記
地役権を第三者に対抗させるためには、登記が必要です。
- 設定の目的
公序良俗に反せず、自己の土地(要役地)の使用価値が増加するものであれば、どんな種類の目的でもかまわないとされています。 - 設定の範囲
承役地の全部に地役権を設定することができるのはもちろん、一部に設定すること(例:北側30㎡)もできます。
一部に設定した場合は、地役権の存在する部分を明確にした地役権図面を法務局に提出する必要があります。
注意:地役権の場合は「地役権設定の対価」や「地役権の存続期間」を登記することはできません。地役権設定契約の際に、設定するケースが多いのですが、登記はできないので注意しましょう。
地役権設定の当事者の扱い
登記権利者 要役地の所有者・賃借権者・地上権者(承役地により便益をうけるもの)
登記義務者 承役地の所有者・賃借権者・地上権者(承役地を利用させるもの)
承役地の登記簿には要役地の住所および地番が登記されますが、要役権者の住所および氏名は登記されません。
不作為の地役権とは
地役権設定の目的は、公序良俗に反せず、自己の土地(要役地)の使用価値が増加するものであれば、どんな種類の目的でもかまいません。そこで、他人の土地(承役地)に一定の行為を制限させる地役権として「不作為の地役権」も認められています。
例えば、承役地に対して、一定の高さ以上の建築物を建てさせない制限をするなどの「眺望を保全する地役権」や「日照を保全する地役権」があります。
また、不作為の地役権設定登記を応用して「容積率(空中権)が移転していること」を登記上で公示し、第三者に対抗できるようにすることで容積率の移転を保全する、ということも可能となっています。
容積率を移転するケース
建築基準法第86条第2項で、連担建築物設計制度について定めています。連担建築物設計制度を活用することによって、単独敷地では個別にかかる規制によって使用できなかった容積活用や空き地の整備等が行われ、その中で、ある土地から別の土地への「容積率の移転」が行われるケースがあります。
連担建築物設計制度・・・複数敷地により構成される一段の土地の区域内において、既存建築物の存在を前提とした合理的な設計により建築する場合、各建築物の位置および構造が安全上、防火上、衛生上支障ないと特定行政庁が認めるものについては、複数建築物が同一敷地内にあるものとみなして、建築規制を適用する制度のこと。
容積率の移転を保全する地役権設定登記とは
容積率の移転を保全する地役権設定登記を行う方法は具体的には以下のとおりです。容積率の移転を受け容積率が増加する土地を要役地、容積率の移転を行い容積率が減少する土地を承役地として、地役権設定登記の目的を「容積率△%(□㎡相当分)を超える建築物の建築の禁止」「高さ○mを超える建築物の建築の禁止」等として地役権設定登記を行います。
この目的はそのまま登記事項になりますので、この地役権設定登記以後は、承役地に対する目的どおりの建築制限を、第三者に対抗できるものとすることができ、要役地所有者にとって大きなメリットとなります。