不動産用語集

共用部分

共用部分の種類

共用部分は、区分所有者の共用に供する部分であり、法定共用部分と規約共用部分に分かれます。

  1. 法定共用部分
    数個の専有部分に通ずる廊下または階段室その他構造上区分所有の全部または一部の者の共用に供されるべき建物の部分を、法定共用部分という(例:玄関ホール・廊下・階段等)。
    建物の基礎、耐力壁、屋上等の基本的部分は、たとえ専有部分の内側にあっても、法定共用部分である。<給配水管の専有・共用判断>
    主管(縦管)・・・共用部分
    枝管(横管)・・・専有部分※ただし、専有部分内にあるもの
    注意:階下の天井裏に配管された配水管から漏水した事案で、配水管が設置された場所その機能等を考慮する必要があるとして、特定の区分所有者の専用に供されている枝管が、専有部分内に属しない建物の付属物として共用部分であるとされた判例があります。Point
    ①法定共用部分は登記できない。
    ②構造上区分所有の共用に供されるべき建物の部分は、専有部分ではなく法定共用部分である。
    ③区分所有者の現実の用に供されていない建物の付属物であっても、専有部分に属しないものは法定共用部分である。
    ④法定共用部分であるためには、区分所有者の共用に供されうる状態にあれば足り、現実に供されなくてもよい。
  2. 規約共用部分
    本来、専有部分となり得る建物の部分や、付属の建物を規約により共用部分としたものを規約共用部分といいます(例:管理人室・集会室)。①規約共用部分は、その旨の登記をしなければ共用部分であることを第三者に対抗できない。
    ②法定共用部分を規約により専有部分とすることは出来ない。ただし、共用者全員の合意により構造の変更をして、構造上および利用上独立した部分とすれば、この限りではない。
    ③規約共用部分を専有部分とすることは出来るが、法定共用部分とすることはできない。抵当権が設定されている専有部分を規約共用部分とするには、抵当権者の承諾を得る必要があります。

共用部分の共有関係

    1. 共用部分は、区分所有者全員の共有に属する。ただし、区分所有者の一部のみが共用すべきことが明らかな共用部分(一部共用部分)は、その一部のもので共有する。
    2. 規約によって、共用部分を管理者または特定の区分所有者の所有とすることもできる。
      ※あくまで管理の便宜のために行われるものであり、これにより、その部分が専有部分となるのではない。
    3. 各共有者は、共有部分をその用法に従って使用できる。

※用法違反があった場合は、区分所有者の共同の利益に反する行為として、その行為の指し止め請求をすることができる
※用法に従った使用は規約で一定の制限をすることができるが、禁止することはできない

なお、共用部分は、規約により特定の区分所有者または区分所有者以外の第三者に対して、排他的な使用権(専用使用権)を設定することができる。
(例:各戸のバルコニー)

共用部分の持分割合

  1. 共用部分の持分は、各区分所有者が所有する専有部分の床面積の割合によって決定される。ただし、規約で別の方法を定めることができる。例えば、一つの専有部分につき、1つの持分を有する等としてもよい。
  2. 持分割合の算定に用いる専有部分の床面積は、規約で別段の定めがない限り、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積による。これを内法計算といい、壁の中心線から測る壁芯計算と区別される。

共用部分の持分の処分

  1. 分離処分の禁止の原則
    共用部分の持分は、専有部分の区分所有権と運命をともにし、両者を分離して処分することは、原則としてできない。
    ※共用部分の持分のみの差し押さえや競売もできない。
  2. 分離処分の禁止の例外
    区分所有法の規定により、以下の2つの場合のみ、共用部分の持分と専有部分の区分所有権が、結果的に分離処分されることが認められている。いずれも、実質的な分離処分とはならないからである。
    a.規約によって、共用部分を管理者または特定の区分所有者の所有とする場合
    b.規約によって、共用部分の持分の割り合いを変更する場合

共用部分の保存・変更・管理

  1. 共用部分の保存
    各区分所有者が単独で行うことができる。
    ※規約で定めれば、特定の区分所有者のみが行うとすることができます。
  2. 共用部分の管理
    a.共用部分の管理に関する事項は、区分所有者および議決権の各過半数による集会の決議で決定する。
    b.共用部分の管理に関する事項については、規約で別段の定めをすることもできる(例:特定の区分所有者のみが行うことができるとするなど)
  3. 共用部分の変更の議決要件
    a.普通決議
    形状または効用の著しい変更を伴わない共用部分の変更(例:外壁の塗り替え)の場合は、区分所有者および議決権の各過半数の決議で決する。ただし、規約で別段の定めをすることができる。
    b.特別決議
    形状または効用の著しい変更を伴わないものを除く共用部分の変更(例:エレベーターの増設)の場合は、区分所有者および議決権の各3/4以上の多数による集会の決議で決する。ただし、区分所有者の定数は、規約で過半数まで減ずることができる。
    ※議決権の割合は、専有部分の床面積の割合によります
  4. 一部の区分所有者に特別の影響を及ぼす場合
    共用部分の重大変更、軽微変更、管理行為によって、専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければその決議は無効となる。
    ※非常階段の設置によって、その非常階段に沿った専有部分だけ日当たりが悪くなるような場合など
    ※保存行為の場合には専有部分の使用に特別の影響があったとしても、その専有部分の所有者の承諾は不要である。
    ※専有部分の所有者の承諾であり、占有者の承諾は不要である。

一部共用部分の管理

一部共用部分の管理のうち、区分所有者全員の利害に関係するものまたは区分所有者全員の規約に定めがあるものは区分所有者全員でその他のものはこれを共用すべき区分所有者のみで行う。
※一部共用部分は、その管理を区分所有者全員で行う旨を規約で定めるにあたり、管理事項のうち特定の事項は、当該一部共用部分を共有する区分所有者のみで行うと定めることが出来る。

一部共用部分のまとめ

全員の利害に関するもの 区分所有者全員で管理
全員の利害に関しないもの 全員の規約に定めがある
全員の規約に定めはない 一部共用部分の区分所有者で管理

他の区分所有者の専有部分等の使用

区分所有者は、その専有部分または共用部分を保存し、改良するため必要な範囲内において、他の区分所有者の専有部分または自己の所有に属しない共用部分の使用を請求することが出来る。
ただし、使用したことによって、他の区分所有者が損害を受けたときは、その償金(損害賠償金)を支払わなければならない。

建物の設置または保存の瑕疵に関する推定

建物の設置または保存に瑕疵があることにより、他人に損害を生じたときは、その瑕疵は共用部分の設置または保存にあるものと推定される。

これは、建物の瑕疵にって損害が生じたが、その瑕疵のあった場所が専有部分か共用部分か特定できない場合に、被害者を保護するため、共用部分に瑕疵があるものと推定し、反証(共用部分以外に瑕疵がありましたという証明)がない限りは、被害者は区分所有者全員に対し、損害賠償請求をすることができる。

共用部分の負担および利益収取

各共有者は、規約に別段の定めがない限り、その持分に応じて共用部分の負担に応じ、共用部分から生ずる利益を収取する。
規約により、共用部分の持分割合と異なる割合で負担および利益収取の割合を定めることもできます。

また、共用部分の負担および利益収取の割合は、共用部分の負担および利益の収取に関する共有者間の内部的な関係に関するものであって、外部的な関係における負担の割合を定めたものではありません。

管理所有者の権限

  1. 規約で共用部分の所有者と定められた区分所有者は、区分所有者全員のためにその共用部分を管理する義務を負う。この場合には、それらの区分所有者に対し、相当な管理費用を請求することができる。
  2. 管理所有者は、共用部分に関する保存行為・管理行為・軽微変更行為はすることができるが、重大変更行為をすることはできない。

管理者と管理所有者のまとめ

保存行為 管理行為 変更行為
軽微 重大
管理者 × × ×
管理所有者 ×

○が単独で可能  ×は単独ではすることができず、集会決議が必要